上高地に下山したのが15時でした。
ヘリの音が聞こえてきたので空を見上げると、岳沢上空から侵入してきたヘリが少し戸惑いながらジャンダルム方面に近づいて行くのが見えました。
これまでに山でよく見かけたヘリのレスキューシーンは到着からピックアップまでがあっというまでした。
しかし、今日のヘリは岩場に接近しては離れを何度も繰り返し、かなり難しいレスキューなんだなと想像がつきました。
なんとなしにカメラをヘリに向け何枚かの写真を撮りました。
写真のデータを見ると15時15分となっています。
肉眼で見ていてもヘリはかなり岩場に接近しているのがわかりました。
身軽な東邦のヘリならまだしも県警のヘリであそこまでギリギリの接近をするのは見たことがなく、ちょっと驚きでした。
僕が見ていたのは上高地からなので角度や距離の関係で正確な位置関係は分かりませんが、写真を拡大してみると対地高度は5mもないように見えます。
しばらくするとジャンダルムのあたりには断続的にガスが出始め、ヘリの姿は何度もガスの中に消えるようになってきました。
そのうちピックアップも終わるだろうと思いながら、僕はヘリのホバリングの音を聞きながら別サイトの日記の下書きをしていました。
するとホバリング音よりほんの少し大きな音で「ドン」という爆発音が聞こえてきました。
え?
と、思った次の瞬間からヘリのホバリング音が消え、あたりが静かになりました。
まさかと胸がざわついたけど、もしかしたら飛騨側に急下降して音が消えたんじゃないかと自分を信じ込ませました。
しばらく梓川沿いに座り空を見上げていたけど、何かが燃えているような煙も見えなかったし後続のヘリもやってきませんでした。
僕に何が出来たわけでもないけど、今少し胸が苦しいです。
僕はあの音を聞いた瞬間に「墜ちた」と理解しました。
だけど僕は気のせいだと自分を信じ込ませ20分ほどたってからその場をあとにしました。
もしも、誤報を承知で「墜ちた」と感じた瞬間に通報すれば数分差の奇跡で何かが変わったんじゃないかと自分を責めてしまいます。
無意味とは思いながらも自分を責める気持ちが消えません。
僕の職場では毎日人が死んでいきます。
その死を僕は数字としてしかとらえていず、時々「自分の感覚が麻痺してる」という見えない恐怖を感じることがありました。
だけど、今日のあの爆発音は今も耳にしっかりと残り、どうしようもないのに自分の無力さと理解を超えた悲しみが心の深いところにへばりついています。
山を愛する者として、山で誰かが死ぬということはとても悲しいことです。
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山行記を書かなかった山行の写真を載せたり、日々の生活や旅の途中での一枚を載せていく予定です。
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