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「牛乳と少年の恋 EPISODE T」


 寝ぼけた頭をもたげて、冷蔵庫へ。
 その無機質なドアを開けると高原のそよ風のような冷気がサラッと肌をなでる。中からよく冷えた牛乳を取り出し、お気に入りのマグカップへ。
右手に牛乳パック左手にマグカップ、冷蔵庫のドアは開けたままで、グビッグビッグビ。
「ん〜たまらん!やっぱ朝は1杯の牛乳からなのねん♪」
 カルシウム満点、お通じ良好、朝は牛乳に限る!!と言うか限りたい・・・
 ダメなんです・・・。牛乳を飲むとお通じ良好どころか、排便全開になってしまうのです・・・
飲んでから10分もしないうちに、トイレなしでは生きていけないサミシイ男になってしまうのです。
 
 これでも小学生の頃は
「牛乳の早飲みに命かけてるぜ!!でも途中で笑わすのは反則だぜ!!」
と、いつでも早飲みの挑戦を待つ、牛乳にすべてをかけた少年だったのです。
 なのにある日突然、牛乳を飲むとモジモジしてしまうサミシイ男になってしまいました。

 そう、忘れもしない高3の夏のあの日。
つきあい始めて間もない彼女とのデートを控えた夏の朝でした。
 いつものように寝起きの牛乳をグビっとやってから、ヘアースタイルを整え、鼻毛が出てないかチェックしていると、肛門括約筋の辺りに熱いモノがこみ上げてくる感触が・・・いやこの場合はこみ下げてくると言った方がいいのでしょうね。
そんな感触が襲ってきたのです。
トイレへ駆け込みその場は何とか収まりました。
 思えばあのときに気づいておくべきでした。犯人は牛乳なんだと・・・

 おかげで、デートの待ち合わせに30分ほど遅れてしまったのですが、そこはつきあい始めて間のない2人のこと
「ゴメンまった?」
「ううん、わたしも今来たとこ。うふっ♪」
「そうなんだ、ゴメンね。うふっ♪」
「いや〜ん♪」
「ばか〜ん♪」
そんなこんなで僕の遅刻は許してもらえました。
 そして、お茶でもしようということで、できたばかりのカワイらしい喫茶店へ。
ほどよくクーラーのきいた店内に入り、窓際の席に座りました。
そして、二人で仲良くメニューを見ていると
”当店自慢 とれたてミルクたっぷりアイスオーレ♪”
という蛍光ペンで縁取りされた文字が僕の目に飛び込んできたのです。
 朝の腹痛が牛乳のせいだなんてまだ知らない僕は、よせばいいのに
「アイスオ〜レ2つ♪」
と、頼んでしまったのです。
 楽しい会話も束の間、おなかの中で熱いどろっとしたモノが暴れ出す感覚が・・・
ここは慌てずサラッと
「ちょっとトイレ行ってくるね♪」
とトイレに出かけました。
 ウンチョをしてきたいうことを彼女に気づかせないために、さっと入ってさっと出てきました。
 
 ここでひとつだけ言っておきたいのは、思春期真っ只中の少年にとって「たった今ウンチョをしてきました♪」ということを彼女に悟られるということは、素っ裸で原宿をほふく前進することよりも恥ずかしいことなのです。
 え?そんなことはない?あなたがそうでもケンチにとってはそれほど恥ずかしいことなの!!誰がなんといおうとそうなの!!

[つづく ]
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