独学ソロの憂鬱 僕の登山スタイルを言葉にするとしたら「独学ソロ」になる。
どこにも属さず誰にも教えを請わずに山へ向かう。
はっきり言って バカな 男前な登山スタイルである。あまりのカッチョよさに婦女子が黙っちゃいない登山スタイルである。
今の時代はインターネットや書籍で技術情報を集めることができるため、燃えるような意欲があるのなら独学ソロでもある程度まで技術を身につけることが出来る。ただ、技術を覚える手段としては独学ソロという方法は非常に遠回りだ。
どのくらい遠回りかというと、雲取山へ登ろうと思って三条の湯の登山口まで来ているのに一旦中央線の塩山から八王子に戻り青梅線で奥多摩まで行ってから雲取山の登頂を目指すくらい遠回りなのである。
と、書いてみたものの僕は関西圏の人間なのでこの例えがどのくらい的を射ているのかはさっぱり分からない。人生なにごともテキトーである。
関西的に言えば、難波から梅田に行きたいのに天下茶屋を経由してそこから瓢箪山周りで梅田に行くくらい遠回りなのである。
閑話休題。
とにかく書籍やwebの二次元の表現から生きた技術を学び取るのは非常に難しいのである。
まずなにが難しいってザイルワークが難しい。
本に書かれたインクノットの図を見ても、ザイルがどう来てどうやってくるっとなってどうぎゅっとなっているのか、パッと見ではさぱり分からないのである。しかし生身の人間から直接教われば大抵の人は30秒で結び方を理解できる。
(注:インクノットはミスって半マストになるとピンチ度がアップしちゃうので気を付けましょう)
インクノットでそれだけややこしいのだからブーリンやエイトノットだとほとんど知恵の輪か天才用IQテストなみの難易度になってしまう。しかし覚えなければ先へは進めないのである。
ザイルの結び方を練習しているくらいの時は危険はないが、実際に外で練習を始めるとなると一気に危険度が増す。独学ソロでの初めての懸垂下降の練習などになると、予習が適当だったりした場合、もうほとんど片道燃料の特攻隊の世界なのである。
さらに友達がいないからと言って独学でソロクライミングまで手を出してしまうと、そこはもう危険とかどうのの世界ではなく、「オッス!オラ自殺志願者!」くらいの世界なのである。
厳冬期の雪山を独学ソロとなると、全裸で組事務所に侵入し「ヒポポタマス!ヒポポタマス!」と奇声をあげながらコサックダンスを踊るほうが安全かもしれない。
危険系の話はこのへんにしよう。
むしろ僕の場合独学ソロの危険なところが楽しくてそのスタイルを押し通しているところもあるので、あまり自分をさげすむのはいい考えではない。
独学ソロの一番の憂鬱は「恥ずかしい」ところである。
何が恥ずかしいって地名がまったく分からんのである。正確には地名の読み方が分からないのである。
山岳会に入ったり、友達や先輩と山に登っていれば当然そこに会話が生まれ、山名や地名の生の音が聞ける。そうやって少しずつ名前を覚えていける。
しかし、独学ソロの場合地名を「漢字」という形で覚えることが出来てもその読みなんて分からないのである。漢字は書き方はひとつでも読み方は複数あるからだ。さらに山名の場合辞書にないような読み方をする場合もある。
大天井岳なんて「だいてんじょう」なのか「おてんしょう」なのか「おおてんじょう」なのか「だいてんどん」なのかワケワカランのである。水俣乗越も「みなまた」なのか「みずまた」なのか今でもよく分かっていない。水俣乗越経由で北鎌尾根を登ったのにである。白出沢(しらだしざわ)なんてイレギュラーバウンドというかほとんど引っ掛け問題みたいだ。
登山口の地名が読めないような場合は更に恥ずかしさが倍増する。
別ルートから登ってきた登山者と山頂で会話になり「どこから登ってきたのですか?」などと聞かれても地名の読み方がわからないから
「えっとあのその・・・。下の方から登ってきました!」
などと決してハズレてはいないが、どう考えても大ハズレな答えしか返せないのだ。
英語版のGPSでは地名がローマ字表記になっているので地名の読みが分かって非常に助かっているが、時々度肝を抜く誤変換があるから逆に気が抜けないのだ。
そんな独学ソロだが、私はその遠回りをとても楽しく感じている。
山は困難なほどおもしろいが、さらに困難に拍車を掛ける独学ソロはもう楽しくて仕方がないのだ。
私に言わせてみればどこかで技術を学んでから山に登るなどという行為は、攻略本を見ながらゲームをするくらいに面白みがないし、答えを見ながら宿題をするくらい意味がない。
山で本当に大切なのは「自分で考える力」だ。
ただ、山岳会で技術を覚えた人が入会半年後には私を追い越していっていることには目を向けないでおこう(;´д`)
だが独学ソロというスタイルは黎明期の登山家らと同じステージに立って山に向かっているような気がして心のど真ん中までワクワクするのだ。
注意
この文章は独学を勧めるものではありません。
独学で雪山やクライミングを行う場合、大怪我や死亡事故が高い確率で起こりえます。また、どう考えても山岳会に入ったほうが山行の幅が広がるし安全度も上がりより山を楽しむことができると思います。僕自身も大目標である海外のある山を独学ソロで登った後には山岳会に入りたいと思っています。無理は禁物です(建前)
書き忘れていましたが、独学ソロで一番憂鬱なのはクライミングギアなどを仲間と分担して買うことが出来ないことです。死ぬほどお金がかかります(;´д`)
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