山とキジと私
さて、早速ですがこれからウンチョについて語ります。
ストレートに言いますがキジ撃ちとは「野グソ」のことです。”最中”の姿が猟師のキジ撃ちの姿に似ていることから、山の世界では野グソのことをキジ撃ちと呼ぶようになりました。
山に関しては素人の私ですが、ことキジ撃ちに関しては人が羨むほどのテクニックの持ち主であり、キジ撃ちの質・量・回数とも世界レベルにあると自負しています。そのキジ撃ちテクニックは「野口健以上、植村直己未満」と岳界からも一目置かれる存在であります。
また、これまでのキジ撃ち決行シチュエーションは春夏秋冬、山川海は当然として、美しい珊瑚礁の海岸から政令指定都市にいたるまで、ありとあらゆるシチュエーションでのキジ撃ち経験があります。
そんな野グソの貴公子が直々に、あなたにアドバイスいたします。
☆ 用意するもの
・トイレットペーパー
・ほんの少しの勇気
用意するものは以上の2点だけです。
最近は山道具屋さんでキジ撃ち用スコップなども販売されているようですが、あんなものは邪道です。必要ありません。なぜならキジ撃ちはもっとスマートに行わなければならないからです(意味不明)
上記にあげた2点ですが、もう少し細かく書きましょう。
・トイレットペーパー
これは必須です。オススメとしては写真のように芯を抜いたトイレットペーパーがベストなチョイスといえるでしょう。最悪これがない場合、財布の中のレシートや近くにある雑草などを使用することができますが、自然保護の観点からオススメすることはできません。
ティッシュペーパーの使用は厳禁です。ティッシュペーパーは水に溶けないため、いつまでたってもあなたのウンチョポイントに白い花を咲かせ続けてしまいます。 まぁ、これは自然保護というよりも、美観の問題ですが・・・。
もっとも自然保護を謳うのならば、ウンチョも持ち帰るべきなのでしょうが、私は聖人君子ではないため、こればかりはゴメンなさいしてます。まぁ、所詮人間の語る自然保護なんて、すべて人間中心に考えられたつまらないエゴなんですよね。
・ほんの少しの勇気
これがあれば、あなたは新しい人生の扉を開くことができます。その先には、光り輝く未来が待っています。
ただ脂汗全開のピンチ状態の場合はこれは必要ありません。ピンチの時は、ほんの少しの勇気より、鍛え上げられた肛門括約筋のほうが欲しくなるはずです。
☆ ウンチョポイントを探そう
さて、道具がそろったら次は場所選びです。
ベテランになればなるほどマニアックな場所を選びがちになりますが、初心者は絶対に無理をせず、素直に登山道からわずかに離れた木陰などを選びましょう。
尾根道の場合
尾根道沿いでウンチョをする場合は、当然尾根から少し降りなければなりません。
森林限界以下の場合、斜面に生えた木の後ろに回り込めば容易に身を隠すことできます。森が深ければ登山道から5〜10mも下ると、誰からも発見されない落ち着いたウンチョポイントを見つけることができるでしょう。
ただ、森林限界を超えた場合はちょいとピンチです。
登山道から離れたところに大きな岩があって身を隠すことができたとしても、そういった場所では先客さんとコンニチハしちゃったり、先客がいなかったとしてもキジ撃ち素人が残したウンチョコロニーができていたり、遠くの稜線からは丸見えだったりすることもあります。こういった場合は、ほんの少しの勇気で乗り切るしかありません。
谷筋の場合
これは谷筋に限ったことではありませんが、絶対にキジ撃ちをしてはならないポイントがあります。水場の近くや水場の上流付近では絶対にウンチョをしてはなりません。
この最低限の約束事を守らないと
「大腸菌コンニチハ」→「阿鼻叫喚」→「屍ルイルイ♪」という不幸を招いてしまいます。
大きな岩が転がる沢沿いは、まさにキジ撃ち天国です。
隠れるポイントは無数にあります。あなた好みのウンチョポイントを探してくださいね。
しかし残念ながら狭い谷の場合、隠れるポイントはほとんど見つかりません。多少、尾根のほうに登っても、登山道からあなたのお尻は丸見えになってしまいます。この場合ひたすら尾根へ登るか、我慢するかしか方法はなくなってしまいます。
唯一の救いは、登山者の視線はほとんどの場合下を向いているということです。足元ばかり見て歩く登山者なら、あなたのキジ撃ちに気づかずに通り過ぎてくれるかもしれません。
もし見られたとしても、見なかったフリをしてくれるかもしれません(死)
☆下準備が快適さを左右する
場所が見つかったからといって、すぐにベルトに手をかけてはいけません。何事にも下準備が必要です。ただし、緊急事態の場合は肛門括約筋と相談しながら、無理そうであれば下準備なしでキジ撃ちを開始してください。
それでは下準備を順を追って説明しましょう。
1 穴を掘る
まずはブーツのつま先などを使って穴を掘ります。穴は深ければ深いほどいいのですが私の場合
幅 ブーツの幅より少し広め
長さ 30〜40センチ
深さ 10〜20センチ
上記のような穴を掘っています。これより小さい場合自分のウンチョから反撃を受けることがあります。
また、穴を掘る際にその穴の上に、木の枝や雑草が覆い被さらないように最善の注意を払ってください。雑草などが邪魔をしたままキジ撃ちをしてしまうと、雑草にくっついた自分のウンチョがほぼ100%の確率でお尻にピタッとくっ付いてしまいます。
2 紙の準備
穴が掘れたあとは紙を準備します。
ベテランになり羞恥心を克服できた方にはこの手順は必要ないのですが、初心者の場合、先に必要量の紙を折りたたんで手元に置いていたほうが、お尻をさらけ出す時間をわずかながら短縮することができます。
”最中”での他人との遭遇は、その後の人生までも左右しかねません。時間短縮にベストを尽くしましょう。
3 耳をすます
穴・紙と準備できれば、あとはタイミングだけです。全神経を集中して周りに誰もいないことを確認したら、ベストなタイミングでベルトに手をかけましょう。
☆さて、腰をおろしてみようか
きっちりと下準備のできた方の場合はあとは出すだけです。美しい景色を眺めながらキジ撃ちを満喫してください。
しかし、非常事態で穴を掘らずにキジ撃ちを始めた方は注意が必要です。
穴を掘ってない状態で和式スタイルでしゃがみ込むと、お尻と地面との距離は3〜5センチほどしかありません。
この状態で、キジ撃ちをはじめると100%お尻にウンチョがくっ付いてしまいます。
しかも、お尻を拭こうとして紙をお尻に持っていった瞬間に、手の甲にベッタリとウンチョが(以下省略)
こういった下準備なしではじめる場合は右の図のようなジョッキースタイルをとることをオススメします。競馬のジョッキーのようなスタイルを取ることによって、お尻と地面のクリアランスを広くとり、安全にキジ撃ちを行うことができます。
しかし、このスタイルは一夜にして出来るものではありませんので、いざという時のために、一度自宅で練習しておいたほうがよいでしょう。
練習中にご家族や恋人に見つかった場合は
「武豊ってフォームが綺麗だよね。さすが世界の豊だよ。」
と適当に誤魔化しちゃってください。
☆終わりよければすべてヨシ
キジ撃ちが終わったら土をかぶせて埋めてあげましょう。
この際、紙の処分方法がいくつかあります。
海岸沿いなどでは、最後に紙を燃やすという作法もあるのですが、山間部では山火事の恐れがあるので絶対に火気は使用しないでください。
最悪の場合、一度のキジ撃ちのために一生分の借金を背負ってしまうかもしれません。
トイレットペーパーの場合
一緒に埋めちゃいましょう。すぐに溶けることを祈りながら。
ティッシュペーパーの場合
水に溶けないティッシュなどを使う、キジ撃ちの作法を知らぬ馬鹿者は、おのれの未熟さに涙して、「ゴメンなさい」を10回言ってから埋めてください。さすがに持って帰れとは言えません。しかし、次回からはちゃんとトイレットペーパーを用意してくださいね。
エコロジストの方の場合
あなたが、使用後の紙を持って帰ることを私は止めません。
「ついでにウンチョも持って帰れよ!」なんてことも言いません。
ただ、あなたが足首を捻挫して、あなたの代わりにあなたのザックを背負うようなことにならないよう祈るのみです。
最後に出来る限り跡形をなくしましょう。ただ穴を埋めるだけではなく、穴を埋めた上に木の葉などを乗せて、何もなかったようにカモフラージュしましょう。
日本庭園を造るような気持ちで美しくカモフラージュしましょう。
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写真提供 陸上自衛隊
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それでこそ、キジ撃ちのプロです。
これでこそ、キジ撃ちの貴公子です。
ただあまりにも美しいカモフラージュのせいで、次に来た人が同じ場所でキジ撃ちをしようと穴を掘ったら、そこからあなたの・・・。
☆あとがき
先日、近くの低山に登ったとき、登山道のド真中にウンチョを発見してしまいました。そのウンチョは埋められることもなく、白い花びらと共にその場に恥ずかしい姿をさらけ出していました。
これを見たときに、
「ここで俺が立ち上がらなければ、この国はウンチョまみれになってしまう。」
と、使命感を感じ今回のキジ、いや、記事を書くことにしました。
私はあえて声を大にして言いたい!
「キジ撃ちは愛だ!」と。
あなたが山に残してきたウンチョは、バクテリアが分解し、木々の栄養となり実となる、その実を食べた小鳥が焼き鳥屋に並び、山行帰りの反省会であなたが口にする。
食物連鎖外からの捕食だけを繰り返してきた人類が、再び自然界の一員に戻れるのです。
ウンチョはめぐりめぐってあなたの食卓へ
ほかにも、「趣味のキジ撃ち」、「キジ撃ち失敗談」をはじめ、「超法規的緊急事態@市街戦」の方法や、「厳冬期キジ撃ち傾向と対策」など、書きたいことは山ほどありました。
しかし、今回はこの国のため可及的速やかに「初心者向きキジ撃ち作法」を書かなければならないと思い、マニアックな話はすべて省くことにしました。
この文章が、少しでもあなたのお役に立ちますように(祈)
穴を掘った瞬間に、誰かのウンチョとコンニチワしませんように(願)
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