alone in the mountain
ダイトレツェルト泊縦走敗走記
     2002/03/23〜24
     メンバー 単独
     天候 曇り時々雨、雪
     山域 金剛山地(大阪・奈良)

注意
 この文章は、とてもハードな山行を行っているかのごとく書いてありますが、実際には小学生でも歩けるような初心者コースしか歩いていません(恥)
 苦情は受け付けてませんが、どうしても一言いってやりたいという方はJAROを通してからにしてください(w


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行程
3/23
近鉄二上山駅→屯鶴峰→二上山→竹之内峠→平石峠→岩橋峠→持尾辻→一本松→大和葛城山
3/24
大和葛城山→水越峠→パノラマ台→金剛山→社務所→伏見峠→久留野峠→ロープウェイ前バス停


屯鶴峰入り口 ゴミの山
3/23(土)

 トイレの水を流してから、近鉄二上山駅のホームに立った。朝からお腹の調子が悪い。

 腹痛の原因はおそらく「徹夜」だろう。徹夜明けはいつもお腹を下す。山行前夜に徹夜したのだからこの腹痛は自業自得だと納得させ駅の改札をくぐった。

 二上山駅を出て歩道のない道を歩く。その脇を大型ダンプが減速もせずに通過していく。風圧と排気ガスに襲われながら屯鶴峰まで2.5km道のりを歩いていく。おそらくここが今回の山行の最危険地帯だろう。山の中に入ってしまえば命を落とす確立は一気に下がる。

 屯鶴峰の入り口はゴミの山だ。あまりの汚さに愕然とする。
あえてゴミが写るように写真を撮ったあと、石灰岩でできた屯鶴峰に入っていった。真っ白な石灰岩でロッククライミングの真似事をして遊ぶ。が、ここは大阪でも有名な心霊スポット。いくら夜が明けてきたといっても一人で長時間いる気にはなれず先を急いだ。

二上山の鉄塔
まだ写真を撮る余裕があった
 アップダウンの繰り返される登山道を10分ほど歩いていると、再び腹痛に襲われた。登山道から外れ、まわりに誰もいないのを確認してからキジ撃ち。
 再び登山道に戻り、鼻歌交じりで軽快に歩く。10分ほど軽快に歩いたところで再び腹痛。また、登山道から外れ、キジ撃ち。その後なんとか二上山馬の背までたどり着き、再びトイレに駆け込んだ。
 腹痛だけでなく嗚咽までもが襲い掛かってきた。


二上山の朝
 意識朦朧になりながらも二上山雌岳に登り、そこから竹之内峠への下りに入る。
 途中、岩屋のあたりで再び腹痛・・・。しかし、二上山・竹之内峠の登山道は週末ということもあり、登山者がひっきりなしに通っている。しかも、身を隠せるようなキジ撃ちポイントも見つからない。顔面蒼白になりながら、必死で竹内峠まで下る。

 途中、水場がありここで水を汲まなければ葛城山まで水場がないのは分かっていたが腹痛がひどく、とても水を汲む余裕はない。

 油汗を握り締めながら、竹之内峠の万葉の森に到着。先客がいないことを祈りながらトイレへ。
 あまりの体調の悪さに下山を考えるが、「まだこの山行は始まったばかりだ。あきらめるにしてもまだ早すぎる。」と自分に鞭を打ち、再び登山道に戻った。

 竹之内山山頂付近で水を飲もうと、ザックからペットボトルを出して、自分のミスに気が付いた。水が残り100cc程しかない。二上山の水場で水を汲まなかったからだ。
 次の水場・葛城山まで、この体調ではどう頑張っても5時間以上はかかる。しかも、朝からの下痢で体内の水分が失われていることは、すでに身体が気付き始めている。

 だが、再び二上山の水場に戻り、水を汲みむ気力はすでになかった。


 そして岩橋山につく頃にはすでに水が尽きていた。


 朝からのゲリと水なしでの歩行で、脱水症状が激しくなる。少し気を抜くと激しい目眩と吐き気で歩けなくなる。ザックを降ろし登山道脇にへたり込む。朝から吹きつづける強風に一瞬で体温を奪われる。ザックからウインドブレーカーを取り出す。体力回復のため糖分を取ろうとアメ玉を口に入れるが、すでに唾液が出なくなってきている。

 ツェルトを張ってビバーグしようかと考えたが、このまま水なしで一晩過ごすのは、身も心も耐えられないだろう。


 風に吹かれながら寒さに耐える。しばらくじっと我慢していると目眩が少しましになってくる。そして落ち着いてザックの中身を確認する。
「ゼリーだ!」思わず声を出してしまった。
行動食として持ってきたゼリ−だ。
すぐに封を切り、口の中に含む。
ゼリーに含まれる水分を体全体で味わうように、ゆっくりとゆっくりと喉を通過させる。細胞の一つ一つに水分が音を立てて染み込んでいく。

 水分のおかげで体力・精神力が回復する。そして、再び立ち上がり葛城山を目指し歩き始めた。


 久保辻あたりで前方から軽快に歩いてくる登山者が視界に入ってきた。
すれ違いざまに「こんにちは」と挨拶。
そして、すれ違ってすぐに後ろから声をかけられた。
「もしかしてグリーンさんですか?」
今回の山行前にyahoo掲示板でいろいろとアドバイスをくれたnari_skiさんだった。今後のルートを教えてもらい、彼に励まされて再び出発した。
 ふと、後ろを振り返ると、もう彼の姿はなかった。


 葛城山まであと少し。しかし、目の前には永遠に続くと錯覚してしまいそうな長く急な階段。
でも、この階段を越えれば水場にたどり着ける。
好きなだけ水が飲める。
一歩一歩、確実に登っていく。何度も目眩と吐き気が襲ってくるが、水場まであと少し、もう少し。
葛城山最後の「壁」
 

 水道の元栓をひねる。
ホースから勢いよく水が飛び出る。
水を口に含む。
渇ききった喉を潤す。
胃袋を通り越して指先や足先まで水が行き渡っていく。



 この夜はツェルトを張り、何も食べずにシュラフにくるまった。

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