alone in the mountain
17年ぶりの八経ヶ岳2
     2002/05/05〜06
     メンバー 単独
     天候 曇り・晴れ
     山域 大峰山地(奈良)

行程
5/5
天川村川合→栃尾辻→頂仙岳→狼平

5/6
狼平→八経ヶ岳→弥山→狼平→頂仙岳→栃尾辻→天川村川合
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5月6日

 いつのまに眠ったのか、時計を覗き込むと朝の5時だった。
ツェルトから這い出し空を見上げると、狼平の狭い空は厚い雲が覆っていた。

 弥山川源流部遡行で八経ヶ岳まで直登ルートをとるか、弥山経由の一般登山道を登るか迷う。弥山川遡行中に天気が崩れ鉄砲水に襲われでもしたら、まず助かる見込みはない。鉄砲水以前にガスにまかれればルートを見つけることすら不可能だろう。

 昨日の朝の時点では天気予報は晴れだったが、すでに24時間ちかく天気予報をチェックしていない。この曇天は天気が崩れる前触れか、一時的な曇りなのかが分からない。
判断がつきかねるので、「7時までに天候が回復しなければ一般ルートから登ることにする」と決定した。

 自分のような技術も体力もない単独登山者が、はじめてのルートでしかも道のないルートを地形図だけを頼りに歩くには、完璧といえるほどの条件が揃わなければ決して無理をしてはいけないと思っている。
 なんせ「万一の場合捜索不要」って登山届に書いちゃってる(w


画像自粛
キジ撃ち中
 結局、7時を回っても空は雲に覆われていた。
しかたなく一般登山道を登ることに決め、ザックを背負った。

 その瞬間、下っ腹に違和感が!!
昨日完全に制圧したはずだったウンチョ軍団の総攻撃の合図だった。
ツェルトの前にザックを投げ捨てトイレットペーパーをひったくるように取り出しキジ撃ちポイントを瞬時に探し出す。この瞬時の判断力は野グソの貴公子と呼ばれる私だけに与えられた神の力である。
「大岩発見!あの岩陰でウンチョ軍団を向かい討て!」
肛門括約筋に力を入れ、走ってるのだか歩いてるのだか分からないような不思議な移動術で大岩の後ろに回りこみ、ウンチョ軍団と真っ向から戦った。

 ウンチョ軍団をコテンパンにやっつけ、落ち着いて周りを見渡すと、狼平の吊り橋からオシリが丸見えだったことに気がつき苦笑い。

 勝利のファンファーレも高らかに、一般ルートからの登山を開始した。

 登り始めて30分がたち、大黒岩横を通過している時に突然日の光が差し込んだ。
あっというまに、それまでの曇天が快晴にかわっていく。
山の天気は変わりやすいというが、こんな猛スピードの天気の変化を体験したのは初めてだ。

 こんなに晴れるのなら弥山川源流部から登れたのに、と残念がるがここから狼平に戻って再び登り返す気はおきなかった。

 八経ヶ岳の隣にある弥山には興味がないので素通りし八経ヶ岳への最後の道に入る。
 一度、弥山・八経ヶ岳のコルに降り再び登り返す。

 目指す八経ヶ岳は近畿最高峰。標高は1914.9m。
「もうすぐ17年ぶりの、あの山頂だ」と思わず目頭が熱くなる。
高度計をみると標高1880m。あと標高差35m、もうすぐだ。

画像自粛
再びキジ撃ち中
 その時だった、
「俺達って、まだやられたワケじゃないもんね」
と、ウンチョ達の本日2度目の奇襲攻撃が始まった。
山頂直下で攻撃を仕掛けてくるとは敵もなかなかの戦略家だ。
戦闘の場を左手に探すがこちらは崖、迷うことなく右方向に登山道から外れる。
山頂を巻くように斜面をトラバースし木陰に隠れ、登山道から見えないのを確認。
結構急な斜面なので、木にぶら下がるようなアクロバティックなスタイルで戦闘開始。


 戦闘終了後まわりをよく見るとムギチョコのような鹿のウンチョが沢山転がっている。
その沢山のウンチョを見た瞬間、鹿との不思議な一体感を感じることが出来たことは言うまでもない(w


17年ぶりの山頂
 再び登山道に戻り、山頂へ向けて最後のひと登り。


 最後の一歩をしっかりと登山道に刻み込み、17年ぶりの山頂を踏みしめた。

 17年ぶりだし、この山には思い入れもあるので、思わず感動で泣いてしまうのではないかと思っていたが、いつ襲ってくるか分からないウンチョ軍団に怯えて感動どころではなかった(w

 っていうか、山頂に人が多すぎでした(涙)
昔、この山に来た時は人なんてほとんど会わなかったのになぁ。
100名山ブームだから仕方ないのかなぁと、寂しい気持ちでいっぱい。

 景色にしても昔に来たときよりも、なぜかボヤけて見える。
「空気が汚れちゃったのかなぁ(涙)」と肩を落とす。

あっ!もしかして!
ザックの雨蓋からメガネを取り出しかけてみると目の前にはスゴイ景色が!!

17年前の視力→2.0
今現在の視力→0.2

しかも、視力が0.2しかないのに普段からメガネを使わないんです僕(w
バイクに乗る時も山に登る時も(w
そりゃ、景色もボヤけて見えるわな(w
いやぁ〜山ってステキですね(ぴゅあ)

 すっかり気をよくし、
大阪を指差して
「名古屋が見えるぞ!」
「おおお!ホントだホントだ!」
「名古屋って結構近いのねん」
と、楽しんでいる100名山ハンターのオジサンたちと素晴らしい時間を共有しました。




 30分ほど頂上でたたずみ、山頂の石を拾いザックに入れ八経ヶ岳を後にした。


振り返ると八経ヶ岳
 途中振り返ると、青空を背景に八経ヶ岳が見えた。
「また、戻ってくるよ」
と思わず声が出る。
声が出ると同時に何故か目頭が熱くなる。

 あれから17年、いろんなことがあった。
何人もの人を傷つけ、
裏切り、そして裏切られた。
薬なしでは生きていけない時期もあった。
何度も挫折し、何度も命を絶とうと思った。
汚れた自分に吐き気のする毎日だった。


 立ち止まったまま雄大な八経ヶ岳を眺めていると、もう死んでしまったと思っていた純粋無垢だった17年前の僕が心の奥深くから語りかけてきた。
「まだ、純粋だった頃の君は死んじゃいないよ。君が忘れてるだけだよ」


飛行機雲
見上げる空には一筋の飛行機雲
空はどこまでも青く、成層圏を突き抜けるほど澄みきっていた

登山道に目を戻し、僕は新しい一歩を踏み出すために踵を上げた。



(;´д`)

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