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行程
金剛山ロープウェイ→山頂の社→国見城跡→金剛山ロープウェイ |
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樹氷を撮影中の彼女
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2003年を迎えた。
ロクなことがなかった去年を忘れ去り、新しい年を迎えるため。僕は彼女と二人で金剛山へ向かった。
ロープウェイを降り、初日の出を待つが、残念ながらそれは分厚い雲に阻まれて姿を現すことはなかった。
初日の出を見ることはできなかったが、はじめてみる樹氷に彼女は大喜びだ。
樹氷と呼ぶにはまだ早い、小さな雪の結晶が張り付いただけの枝を見つけるだけで、大喜びしながらカメラのレンズを向けている。
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雪だるま
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そして、シャッターを切った後でこっちを振り向き、すべてを許せてしまう笑顔で僕を幸せにする。
「寒いと思ってたけど来てよかった」と彼女。
「じゃぁ、次は山頂の社に初詣に行こうか」と僕。
不器用にアイゼンと格闘する彼女に手を貸しアイゼンを装着。しっかりとアイゼンが固定されたかを確認をして山頂へ向かった。
気持ちよくしまった雪の上を手を繋ぎながら登っていく。
山には似つかわしくない歩き方だけど僕らはいつもこうだ。
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夫婦杉
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どこに行くにも手を繋ぎ語り合いながら歩く。
それは街中に限らず山でもそうだ。
一秒であっても離れるのが寂しかった。
山頂の社の前で手を叩き、二人で並んで願い事をする。
「今、隣にいる彼女と結婚できますように」
「何をお願いしたの?」と僕が聞けば
「あなたと結婚できるようにってお願いしたよ」と返ってくる。
夫婦杉を見ながら
「こんな風に根っこから寄り添って仲良くやっていこうね」
と、新年の浮かれ気分にも背中を押されそんなセリフまで自然に出てくる。
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山頂付近は雲の中
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山頂からの下り坂で、それまで前後にいた人たちがいつのまにかいなくなっていた。
音達は雪に吸収され、鳥の鳴き声も風のささやきもない無音の世界。
お互いに目を合わせ自然に唇を重ねた。
何秒も、何秒も。
いつまでもこの時間が続きますように。
永遠に僕らが幸せでありますように。
後ろから来た人の声に我に返り、僕らは何事もなかったように歩き始めた。
もちろん手を繋いで。
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この登山から3週間たったある日。
彼女は突然僕の前からいなくなった。
「はやく結婚しようね」
それが口癖だった彼女はもう僕の隣にはいない。
心のダムはいとも簡単に崩壊し、僕は今涙を流している。
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さようなら
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もう、一人でも大丈夫だと思っていたのに、キーボードが涙に濡れモニターが涙ににじむ。
いつになったら、あの日が戻ってくるの?
いつになったら、僕が僕でいられるの?
いつになったら、あの娘が笑顔で戻ってくるの?
次に手を繋いで歩けるのはいつなの?
教えてよ神様!
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