alone in the mountain
ゆめ(稲村ヶ岳・大日山)
     2003/05/4〜5
     メンバー ぐり〜ん♪
     天候 晴れ
     山域 大峰山地(奈良)
     登頂 稲村ヶ岳・大日山


行程
5/4
大峰・林道終点→川頼谷→レンゲ辻→稲村小屋→稲村ヶ岳→大日山→稲村小屋(テント泊)

5/5
稲村小屋→レンゲ辻→川瀬谷→大峰・林道終点
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 人間誰だって楽をしたい。

 もちろん僕だってそうだ。

 でも、確実に言えることは楽をして得た夢より、苦労して手に入れた夢の方が価値があるという事だ。
出発!
 のっけから説教臭くなったが、これは僕が山から教わったひとつの真理だ。もちろん人によって価値観は違うだろうし、他人に僕の価値観を押し付けるつもりもない。
 でも僕の場合、楽な道を歩いて辿り着いた山頂より、苦しい道を歩いて辿り着いた山頂の方がはるかに喜びが大きい。山の高さや有名無名は関係ない。辛ければ辛いほど登頂した時の喜びが大きい。

 俗物的に例えるなら、宝くじで3億円を当てる人生より、事業を成功させて3億円を手に入れる人生の方が喜びが大きいという事だ。

  楽をして手に入れた夢は魔法が解ければすべてが無に帰すだろうが、苦労して手に入れた夢は例えそれがなくなっても、その経験が次の目標への燃料となる。

川瀬谷
川瀬谷の滝
 さてさて、そんなこんなで稲村ヶ岳へ登るルートをあれやこれやと考えたんですが最終的に川瀬谷ルートで登る事に決めました。川瀬谷ルートから登ろうと思ったのはズバリ、「苦労できそう」だったからです。

 稲村ヶ岳について書かれたガイドブックやサイトを見てまわると「降りでも激しんどいルート」とか「あの急登は2度とゴメン」なんて感じで書かれまくっていたので、僕のアルピニスト魂にシュボッと火がつきました。もう、稲村に登るにはこのルートしかない!ってな感じでした。

 まぁ、実際に登ってみると想像以上に整備が進んでいて危険な個所にはしっかりと鎖が打ち込んであり、正直言ってちょっと拍子抜けでした。噂に聞く急登も確かに急なんだけど自分のペースさえ守れば鼻歌まじりに登れる程度でこれも拍子抜けでした。

 でも、すれ違う人からは
「えっ!?ここから登るの!?」とか
「ワシら降りでもキツイのに兄ちゃんはスゴイなぁ!」
みたいな感じで言われ、まるで自分がスゴイ登山家になっちゃったみたいな錯覚をうけ、ちょいと天狗モードになれました(幸)

 ちなみに、根が単純なんで誉められると伸びるタイプです(;´д`)

サンドウィッチをほおばる
今日の寝床
 まぁ、そんな感じで気分よくレンゲ辻までの沢沿いの道を歩き、女人結界の前を通過して稲村小屋へ。

 まずは登頂前に稲村小屋の裏にテントを張らせてもらうことにしました。

 テントを張ろうとザックを降ろすと、オジサン達が僕のほうにゾロゾロと集まってきました。「なな、なんやねん・・・。」と思っているとオジサン達はお願いもしてないのに僕のテントを張るのを手伝ってくれました。

 今回の山行に持ってきたテントは新品で今回が初出動だったので、ホントは一人で張りたかったんですけどね・・・。しかも、オジサン達は「俺達はベテランだもんね!」みたいな顔をして、テントの張り方をご教授しだす始末だし・・・。アドバイスをくれる割にはフライシートを破りそうになるし、ペグを足で踏みつけて新品のペグをあっさりと曲げちゃうし(涙)

 「いい加減にしてくれ!俺は一人になりたくて山に来たんだ!俺に構うんじゃねぇ!しかも偉そうにテント張りの講釈を垂れてくれてるが、こっちとら500泊以上テントで生活している筋金入りの社会不適格者だ!オマエラと遊ぶためにここに来たんじゃねーや!ほら、散った散ったぁ!」
 なんて言えれば気持ちいいんでしょうが、そこは気の小さい僕の事、
「いやぁ〜。助かりました。ありがとうございます。このテントを張るのって初めてだからアドバイスいただいてホント助かりました。ありがとうございます。ありがとうございます・・・。」

 今度、生まれ変わったら思った事をズバッと言える男に生まれたいもんです(涙)

 60Lザックはテントに置き、5Lのアタックザックに必要最低限の物を詰め込み、 いよいよ最終アタックです!

 途中、雪渓が登山道を飲み込んでいる個所がありましたが、雪渓をトラバースし難なくクリア。特に危険な個所もなく、稲村まで何の苦労もなく登ってしまいました。
登山道は雪の下
稲村ヶ岳山頂からの眺め
 山頂からの眺めは確かによかったけど、特に感動もなし。山頂に作られた展望台も興ざめするだけ。
 う〜ん、望んでいたものとなんか違う・・・。

大日キレット
トンガった大日山
 稲村ヶ岳山頂を後にし、もうひとつのピーク「大日山」を目指す事にしました。
  大日山は上の写真のように、これでもか!ってくらいトンガってます。稲村小屋にいたおばちゃんが「怖いからあの山には、よ〜登らんわ〜。」って震え上がっていたのにも納得できるトンガリぶりです。もう、手をつけられない不良少年のようにトンガッてます。

 その姿をみるだけで僕のアルピニスト魂がくすぶられちゃいます。

大日山の鎖場
奈落の底へようこそ
  大日のキレット脇におそらく邪魔になるであろうストックをデポし、いよいよトンガってる大日山へアタック開始です。

 岩をよじ登ったり、木の根を掴んで上にあがったり、腐った梯子を超えたり、ガケっぷちの脚立に足を掛けたりしながら高度を稼いでいきます。

 これでこそ山です。ロマンです。ドラマです。
男の遊びには危険な香りが不可欠なんです。

 命を張ってこそ登山。
 危険に挑戦するからこそ登山。
 女子供にはわからない世界なのさ!

 まぁ、実際にはチビッコでもジャングルジム感覚で登れちゃうようなところなんですけどね・・・。

 まぁそこは今まさにドラマの主人公である僕にはどうでもよいことです。
エベレストのヒラリーステップを攻略しているような気分なんです。

 そして最後の壁をクリアすると夢にまで見た山頂が!

 ピーガガー(無線のノイズ風)
 「ベースキャンプ、ベースキャンプ。こちらアタック隊です。たった今登頂に成功しました。頂上は天気もよく最高の見晴らしです。最高の気分です。ありがとうございます。ピーガガー」(エベレストアタック隊風)
アタック隊登頂成功!
 僕は山頂で両手を空へ突き上げ、全身で感動を表しました。
 いつまでも、いつまでも両手を突き上げたままエクスタシーを感じつづけました。正確にはセルフタイマーのシャッターが切れるまで両手を突き上げ続けました(;´д`)

 苦労して、辛い思いをして、怖い思いをして登った甲斐がありました。標高なら稲村ヶ岳の方が大日山より高いけど、感動は大日山のほうが100倍以上ありました。

 山っていろんなことを教えてくれるなぁ。

読書中
夜が訪れた
 テントに戻り、本を読みました。その本は僕にとってとても大切な人から薦められた本でした。

  その人はとても不思議な人で、僕が過去に置き忘れてきた夢を、
「ほら、これでしょ?過去に忘れて来たものは」
と、いつも優しく僕に差し出してくれるのです。

 少年時代の輝きも、若き日の夢も、時間の流れという強大な敵から奪い返してくれました。
 本当に大切なものは心でしか見えないことも教えてくれました。
 繊細な言葉と、澄んだ魂で様々な事に疲れ果てた僕を救ってくれました。

 外に出てテントの脇に座り、夕焼けを見ながら本の続きを読みました。
その本は夢を追いかけながらも苦悩していた頃の自分とオーバーラップし、僕に勇気を与えてくれました。


 お酒を軽く飲みながら本を読み、一人を満喫しました。
 そうこうしているうちに、あたりは次第に暗くなり少しずつ星が顔を見せ始めました。ブナの木の枝の隙間から星たちは輝き、細い月がうっすらとそして恥ずかしそうに光っていました。

稲村小屋とザック
入っちゃダメ!
 目を覚ますと早朝5時でした。
寒かったのでご来光はキャンセル。まぁキャンセルというか最初から興味なかったんですけどね(笑)なんせこの15年間、ほぼ毎年正月は富士山の本栖湖(5千円札の裏の風景の場所ね)に行ってるんですがいまだに初日の出をみた事がないというくらい日の出に興味がないんです。

 夕日は一日のうちで一番好きな空なんだけどねぇ〜。

 そんなこんなで、乾燥牛丼とコーンスープを食べいざ出発です。
 出発して5分ほどで、サクッとこの山行2回目のキジ撃ちを行い体重を減らして再出発。やっぱ山はキジに限るぜ(;´д`)

 女人結界門の前でオバカな写真を撮ったりしながら、来たルートを戻ってバイクを置いている場所へ到着。
 無事に下山し、今回の山行を終えました。


 帰り道、バイクで走っていると道路脇が真っ白に輝いていました。なんだろうと思いバイクを止めその正体を見ると、一面シャガの花が咲いていました。

 この花ってなんだか噛み付いてきそうな感じがしてホントはあまり好きじゃないんですけどね(w
道端のシャガ


 前を見ると車が信号待ちをしている!
道路脇のある美しいものに見とれて信号があることに気が付かなかった。
こっちはかなりのスピードを出していて止まれそうにない!
本能的にブレーキだけでは回避不可能な事がわかった。

 ロック寸前の急ブレーキ!

 ギリギリまでブレーキを掛け続け、車にぶつかる寸前でバイクを無理やり右に寝かし込み反対車線に飛び出した。

 停車中の車の横を突き抜け、ギリギリで事故にならずにすんだ。
まばたき一回分でも、停車している車に気が付くのが遅れていたら大事故になっていた。事故にならなかったのは運がよかっただけだ。反対車線に車がいなかった事も幸いだった。

 バイクを止め振り返った。
僕が見とれてしまい、危うく事故の原因になってしまいそうだったある美しいものがとても綺麗な歩調で何事もなかったように僕に背中を向けて歩いていた。

 美しい人が着るノースリーブは罪つくりだ(;´д`)

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