alone in the mountain
地蔵岳・東稜

     2005/08/21
     メンバー 
ぐり〜ん・Mさん
     天候 曇り時々雨
     山域 播州山地(兵庫県)



ルート

 雪彦山・地蔵岳東稜

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。


 「イヤァーーーー!!」

 天を切り裂くような彼女の悲鳴が山々にこだまし、僕はただ事ではない雰囲気をすぐに感じ取った。振り向くと彼女は何かに憑かれたように小刻みなステップを踏みながら踊り狂っていた。

 心霊スポットのひとつとも言われる雪彦山。
彼女は何かに取り憑かれてしまったのだろうか。
雪彦山・地蔵岳東稜取り付きテラスの手前、彼女は気がふれた表情で霊に憑かれたように踊り続けた。

 僕は彼女に原始的な恐怖を感じた。

 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 不気味なダンスを踊りながら、彼女は意味不明な念仏まで唱え始めた。

 必死に足首を指差しながら狂気の念仏を唱える彼女。
 「昼昼昼昼昼!!!!!」

 もうこの人はダメだな。
僕の中には諦めにも似た感情が生まれ、もう彼女を救えないだろうことを悟った。

 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 「足にヒルがくっ付いてんだっつーの!早く取れこのボケ男!」
 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 「昼昼昼昼昼!!!!!」
 「ヒルヒルヒル!!!イヤァー!早く取ってぇーーー!」

 はぁ・・・、ヒルくらいでビビリ過ぎですよ・・・。
そりゃまぁ、確かに気持ち悪い生き物ではあるけど、ちょっと取り乱しすぎですよ・・・。あなたのせいでホラ、また山行記の出だしが長くなっちゃったじゃない。脚色するのも大変なんだから。前回の山行記からクライミング関係の山行記ではマジメにルート紹介をしようと心に決めてたのにさっそくコレじゃん。

 んじゃ、ヒルの話はこれくらいにして山行記いきますね。

ランナウト
ビレイ終了

 あれは2年前、クライミングを始めて3週間目くらいの頃でした。

 なにを血迷ったのかクライミングド素人の僕は、ソロクライミングでマルチピッチを登ろうと思いこの地蔵岳東稜にやってきました。だけどそこは素人、ソロの恐怖心に耐えられず2ピッチ登ったところで尻尾を巻いて逃げ帰ってきました。なんつーか完敗でした。

 あの日から2年がたち、いまだに3級の壁でムーブに悩む3流クライマーの僕ですが、あの日のリベンジのために再び地蔵岳に帰ってきました。

 今回はソロではなく、彼女とともに地蔵岳の壁に挑むことにしました。


 またまた前置きが長くなりましたが、ここからはビュビューンと快速で書いていくんで遅れずに付いて来いよ>ALL


 ・ 1ピッチ目 (スラブ 3級 ぐり〜ん♪リード)
ボルトがぜーんぜんありません。
テラスから1ピン目までいきなり15mくらいのランナウト。
落ちたら死ぬって!怖いって!
リスもないからハーケンも打てないしナッツもカムも使えない。
いくら3級のルートだからってちょっとボルトなさすぎすっよ。
こわいっすよ。

 あ、また文章が長くなりそうやん。
今度こそぶっ飛ばすぜ!>ALL


快適なスラブ
東稜スベリ台

 ・2ピッチ目 (スラブ 3級 Mさんリード)
長いスラブ状を途中で切って大テラス立木まで。
途中から傾斜が落ちる。横に見える東稜スベリ台が美しい。
東稜ハングは邪悪。

 ・3ピッチ目 (バンド状 2級 ぐり〜ん♪リード)
オシリを掻きながらバンド状をチムニー下まで。


下を覗く
落雷のあと



逆クリップしてますよー
地蔵岳

 ・4ピッチ目 (チムニー 3級+ Mさんリード)
三流クライマーな僕には出だししょっぱめ。
チムニーから身体を出し、左フェースをヒーヒーいいながらクライム。

 ・5ピッチ目 (ブッシュ コンテ)
松の間をコンテで歩き遭難碑のあるリッジ下まで。
このあたりスズメバチの偵察隊に付きまとわれる。

遭難碑のリッジ
山頂から

 ・6ピッチ目 (リッジ 3級− Mさんリード)
スズメバチの警戒飛行がはげしくなる。
スキを見つけてリッジに取り付き一気に彼女がリードしていく。
ビレイ中の僕のまわりをスズメバチが周回しはじめ生きた心地がしない。

 「早く登りきって、オレをスズメバチの恐怖から開放してくれ!」
と祈る気持ちで彼女を見上げると、壁の途中でカメラを出してノンビリ写真撮影中。

 さすがオレの彼女。
それが君の愛情表現なんだね。

 その間も、ブンブンと僕の周りをスズメバチが威嚇飛行を続ける。


 ・7ピッチ目 (凹角 4級−〜2級 ぐり〜ん♪リード)
最終ピッチ。
今日は9mmシングルで登っていたので、1ピン目を取る前に滑落して墜落係数が2になると、ザイルが切れてほぼ間違いなく谷底へグランドフォールしそうだったので、キャメロット2番をサクッとセットし1ピン目確保。
その後、立木に中間支点を取りながら登る。
雨が降り出したので右のフェースには行かず、そのまま直登。
山頂の松の木でビレー。
彼女も登り終え終了。

 そんなこんなで無事に地蔵岳東稜を登ることができました。


 関西の初心者クライマーのマルチピッチデビューによく使われる地蔵岳東稜ですが、技術的難易度は前穂北尾根の3峰登攀より数段上です。

 下山は一般ルートから降りてくるのですが、これまた極悪。苔でツルッツルの岩場を鎖やトラロープを頼りに降りなければなりません。

 もしかしたら東稜よりこっちのほうが 怖いかもしれません。

ということは
地蔵岳一般下山路>地蔵岳東稜>前穂北尾根
という式が成り立ちますね。

んなワケねーか。
終了
 


 この山行記を
   下山中にも足首にヒルをくっつけて降りてきた彼女へ捧ぐ。





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