おっす。
北岳バットレスに行ってきたっす。
北岳バットレスはクライミングを始めた頃に一番行ってみたいと思っていたルートだったのですが、なぜか計画を立てるたびに大雨が降って南アルプス林道が木っ端微塵になったり、某山岳会の会長から妨害を受けて山行が中止になったりして、どうしても行くことが出来ませんでした。
そんなこんなのなかなか行けない北岳バットレスでしたが、今回ようやく憧れのバットレスに行くことが出来ました。
今回の山行では彼女にリーダーを経験してもらいました。
さらにバットレスのオイシイピッチをリードする権利をすべて彼女にプレゼントするという、愛に満ちたプランでバットレスを楽しんできました。
今回の山行記はいつものバカ山行記とは違い、これからバットレスに向かう人の参考になるようなことを書けたらなぁなんて思ってます。
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二俣から大樺沢を40〜50分ほど登ると、大岩が沢の真ん中に転がっているバットレス沢に着きます、バットレス沢を通り過ぎ50mも歩くと水の流れているC沢が現れます。
このC沢の右側(バットレス沢側)にある尾根に一般道並の踏み跡があります。一般登山者が迷わないようにあちこちに「Xマーク」が書いてありますが気にせず進みましょう。この尾根の道を進むと自然と下部岸壁に導かれます。
あえてマニアックなルートを進もうとしない限り、まず迷うことはないと思います。
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屏風のように広がる下部岸壁の下を左に歩き、突き当りまで歩けば上の写真のようなbガリー大滝にたどり着きます。グレードはV級2ピッチです。
記念すべき一ピッチ目は、今回リーダー役の彼女がビシッとキメました。
bガリー大滝を2ピッチ登ると緩傾斜帯に出ます。終了点から左上に向かって踏み跡が伸びているので、それを道なりに上がっていきます。しばらく登っていくと左手に赤いリボンがぶら下がった踏み跡が見えてくるのでその踏み跡に入り2尾根の末端をトラバースしていきます。
このトラバース道を歩いていると、2尾根沿いに上へ上がっていく踏み跡が現れますがそこに迷い込まないようにしましょう。上への踏み跡へ行かずに2尾根の末端を越えるまでトラバースを続けるとCガリーが見えてきます。
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Cガリーに出たら、そのままCガリーを詰めていきます。
ちょっと急ですが50〜80mも登ると左手に上の写真のような苔だらけのヒドンスラブ(W)が見えてきます。濡れていると少しいやらしいですが、最初の3手ほどを頑張り途中から左に逃げれば歩いて上まで上がれます。
このヒドンスラブを登りきり、踏み跡を20mほど歩くと4尾根の取り付きのコーナークラックに出ます。
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1ピッチ目のコーナークラックはX−のグレードが付いていますが、実際に登ってみると、そこまで難しい感じは受けませんでした。
最初の2mだけがW級、上の写真の角度が変わっているところまで登ればV+くらいの感じでした。
体を右に振った状態で取り付き、写真の下のほうに写っている大きなスタンスに足を乗せ、左の側壁にある小さなクラックに爪先を入れてステミングを決めてから上の緩い斜面のクラックに足を入れてしまえば、フットジャムで痛い痛いと半笑いになりながら簡単にクリアできます。
2ピッチ目(U〜V)は土のバンドから左右どちらからでも登れますが、右のルートの方が簡単なように思えました。
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3ピッチ目(V)は白い岩のクラックと呼ばれているピッチです。いたるところにホールドがあり楽しく登れます。
4ピッチ目(V)はピラミッドフェースの頭を右から巻き、X級垂壁手前の安定したテラスまで進みます。
5ピッチ目(X)は北岳バットレス第4尾根の核心、5mの垂壁です。
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X級の垂壁と聞いていたのでビビッていたのですが、実際に垂壁を見てみると上の写真のようにかなり寝ています。垂直なのは上の2m弱だけで下部は思いっきり寝ています(;´д`) |
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このX級の垂壁は多くの人に登られているため、スタンスがツルツルですが、細かいスタンスを慎重に拾っていけば思ったよりも簡単に登れます。
僕は垂壁の中心よりやや右にあるステップから上がり、細かいスタンスを拾いながら身体を上げ、上の写真の縦に走るクラックにフィンガージャムで上半身のバランスをとりました。垂壁から上にひょいと顔を出すと第一関節がしっかりかかるカチがまさに欲しいところに2箇所あり、そのカチを持てばあとは縦に走るクラックに無数にあるスタンスに立ち込んで身体を上げてやればクリアです。
この垂壁は右に逃げればV+くらいでクリアできるらしいのですが、岩の下部は磨かれていてかなりツルツルになっているので、そのツルツル面をトラバースするより、垂壁をまっすぐ上がっていくほうが安全なような気がします。
直登が難しい場合は無理せずA0を使えば、V級程度の難易度になりそうなので初心者の方でも十分登れると思います。
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垂壁を抜けると上の写真のようなナイフリッジが現れます。
傾斜はないので難しくはないのですが、左右にすっぱりと切れていて素晴らしい高度感を味わうことが出来ます。今回登ったピッチの中でこのナイフリッジが一番気持ちよかったです。
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マッチ箱からの懸垂下降は、カラビナがダブルで残置してあったので安心して懸垂下降することが出来ました。
やや右よりに懸垂下降していくと次のピッチのテラスに降り立つことができます。 |
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6ピッチ目(W)は上の写真のクラックを登ります。
写真ではかなり立っているように見えますが、実際はあまり傾斜はありません。ホールドも豊富なので楽しく登ることが出来ると思います。
僕らはこの6ピッチ目(W)と次の7ピッチ目(V+)を繋げて1ピッチで枯れ木のテラスまで行こうとしたのですが、50mザイルでは枯れ木のテラスまで届かず、その手前の小さなテラスでピッチを切りました。
8ピッチ目(V+)は出だしだけV+ですが、そこを超えると歩いて終了点まで登れます。途中落とし穴(溝)がたくさん開いているので落ちないように気をつけて歩きました。事実上このピッチで登攀終了です。
9ピッチ目(U)は完全に歩きで終了点まで上がれます。
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終了点から15分ほど踏み跡を上がると一般登山道に出るので、そのまま頂上へ向かえば日本第2の高峰、北岳の頂を踏むことが出来ます。
僕はいろいろあってバットレス登攀終了後から気持ちが乗らなかったので、北岳の頂上手前5mまで行きましたが、頂上は踏まずに帰ってきました。
普通の人から見れば馬鹿げた行動ですが、どうしても捨てきれないこだわりのようなものがあり頂上は踏みませんでした。
正直いうと、北岳バットレス4尾根はあまりに簡単すぎて拍子抜けしてしまいました。壁というよりも岩稜歩きに近いと思います。言ってしまえばマルチピッチを覚えたばかりの初心者同士でも登れてしまうルートでしょう。
だけど、いくら簡単といってもそこは標高3000mの岩場です。トラブルが起きたときに自分たちだけの力で安全なところまで退避できる力なしで挑戦するのはちょっと危険だと思います。
登る技術にばかり目が行くクライミング界ですが、セルフレスキューの技術をまったく知らずに挑戦するのは無謀と言えるでしょう。「無謀」というよりも、山やレスキュー隊や他のクライマーへの「甘え」といったほうがいいかもしれません。
いくら簡単なルートと言っても、しっかりと自立したクライマーのみが登ることを許される場所であると僕は思います。
うわわ。
今回はマジメに書いたなぁ。
頑張ったなぁオレ。
いつもとキャラが違うなぁ。
そんなこんなで、最後はオマケ山行記です。
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いつもはバイクでビュビューンと山に向かうのですが、今回はノンビリと車で山へ行ったので、帰りに奈良井宿や妻籠宿に寄ってまったり観光気分を味わいました。
追記
上の写真を見てぐり〜ん♪っていつも「オレ貧乏オレ貧乏」って言ってるくせにBMWなんて乗って金持ってんじゃん!というツッコミがあったのですが上の写真のBMWは彼女の父の車です(;´д`)
僕は車の免許さえ持っていない正真正銘のビンボーです。
ちなみに彼女の父はお金持ちですが、彼女は僕よりもさらにビンボーだったりします(;´д`)
同情するなら金をくれよぅ。
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帰り道にどこかの山に登りたいなぁということになり、伊吹ドライブウェイを車で走り、歩行時間15分で日本百名山中最低人気の伊吹山に登ってきました。 |
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伊吹山の山頂の売店でお土産を買って、ビニール袋片手に下山してきました。どうみても近所にたこ焼きを買いに行ってるようにしか見えないのがアレですね(;´д`)
っていうか、伊吹山の階段は雨のせいで氷のようにツルツルになっていて、本気で北岳バットレス第四尾根の3倍くらい怖かったです(;´д`)
おしまい
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