「あなたの脚は治らないでしょう。」
関西でもトップクラスのスポーツドクターに死刑宣告を受けた1年前、僕は絶望の淵にいた。
だけど山を諦めることは出来なかった。
僕は試行錯誤を繰り返しながら壊れた脚の回復トレーニングを続けた。
死刑宣告から半年後、僕は地元の小さな山に登った。
いつかきっと北アルプスに戻るんだと小さな一歩を繰り返し、標高差200mの山を5時間かけて登った。
それからさらに半年、僕はこの命を捧げてもいい思っている北アルプスへ帰ることが出来た。
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おっす!
北アルプスへ行って来たっす!
ちょっと前にロープウェイ利用で西穂にも行ってたんだけど、西穂って「登山」って感じがしないじゃないですか。
僕が行った時も、ボストンバックを抱えたおねーさんや普段着のおばちゃんとかまでいて、登山というか近所にたこ焼きでも買いに行ってる感じだったんですよ。
それに比べると今回の山はバッチシ登山ですよ。
この山に成功したら”登山復活宣言”を出していいんじゃないかって言える山ですよ。
そんなこんなの復活登山の山行記です。
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前日、横尾でテント泊してブリブリと本谷橋まで進みました。
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そのまま橋を渡らずに川沿いを歩くと30分ほどで上の写真の涸沢と横尾本谷の出合に着きます。
本谷の方は上の写真のようにとても美しくメルヘンチックな感じなんですが、涸沢の方は薄暗くどんよりしてとても寂しい感じでした。
あまりに貧素すぎて写真を撮るのを忘れたくらいです(;´д`)
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涸沢出合から30分ほどではっきりとした二股にでました。
右は本谷カールへ続く右俣、左は左俣カールや北穂池の滝へと続く左俣。
難易度的には左俣の方がやや難しいらしいのですが、北穂池の滝を見たかったのでここは左俣へ。
上の写真のように岩が堆積しまくって左右の尾根からの落石が危険そうな場所ですが気にせずGOです。
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二股から30分ほどで北穂池の滝へ到着です。
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この滝を見たくてこのルートを選んだので、感涙です。
写真でみると水量が少ないですが、実際には結構迫力がありました。
残念ながらこのあたりも落石の危険があるのであまり長居はできませんでした。
のんびり楽しみたいけど、こういうところではスピード=安全の基本を守らないといけないですよね。
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北穂池の滝の次は、北穂池に行こうと言うことで滝のすぐ上の分岐を左へ行き北穂池へのトラバース地点を探しました。
一度目は小さな滝状の場所を詰めようとしたのですが、触る石すべてが浮石であまりにも危険すぎて諦めました。しかしここで1時間ほど時間をつかってしまいました。
次にもう少し沢を詰めて、「ここが北穂池へのトラバース地点だ!」と確信を持てる場所を見つけトラバースを開始したのですが、藪こぎに時間をとられてタイムオーバーとなってしまいました。
このトラバース地点を見つける前の1時間のタイムロスがなければ行けたのになぁ、残念。
上の写真では「北穂池の台地まですぐそこやん」みたいに見えますが、実際には藪こぎで進むには気の遠くなるような距離でした。
結局、北穂池は次回にということであきらめ、左俣カールを目指しました。
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左俣カールはおもわず声を上げるほどに美しく、その大きなカールに僕ら二人しかいないというのがなんとも言えない気持ちよさがありました。
紅葉シーズンの3連休で涸沢カールへは大渋滞なのに、隣の左俣カールはひっそりとしていました。
風が強くとても寒かったけど、はじめてみる景色に僕も彼女も興奮気味でした。
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正面が大キレットの最低コルです。
僕ら二人は大キレットに行ったことがなかったので、今回大キレットを歩けるのを楽しみにしてました。
といっても最低コルから南岳までの半分しか歩けないですけど。
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この角度から見る南岳はカッチョイイなぁ。
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ちょいと紅葉には早かったけど、うっすらと色付く黄色と赤が美しかったです。
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大キレットへは、上の写真のようなところを詰めて行きます。
写真以上に傾斜があるし、岩の3割が浮石なので結構気を使います。
大勢で登るときは後ろの人ほど落石に巻き込まれるリスクが高くなるので、メンバー間の上下関係や不倫関係などを考慮して登る順番を決めるといいと思います(悪)
一応このルートはバリエーションルートと言うことになっていますが、登山道がないだけで難易度的には北アルプスの他の一般ルートと大差はありません。
ただ、目印などは一切ないのでルートファインディングの技術が必要なのと、涸沢出合から大キレットの最低コルまでずーーーっと落石の危険が伴うので、浮石の対処法や危険地帯を早く安全に歩ける力があるほうがいいかなとも思います。
横尾本谷ははじめてのバリエーションにオススメなルートなので、ぜひ行ってみてください。
ただ、「おお!そんなにいいルートなら行ってみるよ!」と出かけて落石直撃であの世に旅立ったとしても、僕の夢枕とかに立つのはなしでお願いします。
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最後の最後で2,3手ほどクライミング的なムーブを要求されますが、それをクリアするとドドーンと大キレットの最低コルに到着です。
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大キレットの途中で振り返ると北穂がカッチョよくそびえていました。
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一年ぶりに槍をみることができました。
僕にとってNo1の山です。
久しぶりの高地で薄い酸素にヒーヒーいいながら南岳小屋まで行き、先にテントを張ってから空荷で南岳の山頂を目指しました。
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山頂からの景色は神々しく、僕の心を満たしてくれました。
この景色を見るために、1年間努力を重ねてきました。
絶対に北アルプスへ帰るんだと努力を重ねてきました。
その時は簡単でもいいから登山道のないバリエーションルートから山頂を目指すんだと誓っていました。
その夢が叶い、思わず涙がこぼれそうでした。
この目標をサポートしてくれた彼女に感謝です。
そして応援してくださったみなさんに感謝です。
もしみなさんと山でお会いすることがあれば、なんかおごってください。
(w
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そんなこんなで幸福な気持ちと高山病の重い頭で南岳のテン場で一夜を過ごしたのですが、翌日は暴風雨でした。
天気が崩れる予想はしていたのですが、想像していたより雨量が多く予定していた新穂高方面への下山は危険と言うことで、天狗池経由槍沢下りでの下山となりました。
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ちなみにこの写真は川ではなく登山道です(;´д`)
僕は理系脳で、いっさいの非科学的な話は否定します。
血液型占いなんて鼻で笑うし、細○和子や江原○之とかウンコプーだと思っています。
だけど、残念なことに雨男なんです(;´д`)
科学の力では説明できないほど強力な雨男なんです。
どのくらいの雨男かと言うと、以前北海道に2ヶ月行った時は雨が降らなかった日は3日だけでした。今年の8月に九州へ6日間の旅行をしたのですが6日とも雨が降りました。ちなみにその時の降水確率は毎日30%程度だったのですが、僕の雨男パワーの前には降水確率なんて無力でした。
僕がいるところだけピンポイントで雨が降るんです(;´д`)
僕の力があればサハラ砂漠でも緑のジャングルに生まれ変わらせそうです。
そんな僕なんで今回の山行からは防水カメラを持っていくことにしました。
さっそくそれが役に立ち、ぐりん大満足です。
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雨ってのはやっぱりイヤなもんですが、雨の日には雨の日にしか見れない景色があると思ってます。
これまでの人生で記憶に残る美しい風景は雨の日だったことが多い気がします。
今回も美しい風景を見ることが出来たのですが、そういうときに限って写真が手ブレだったりしてご紹介できないのが残念です。
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何ヶ所かヤバ目の渡渉もありましたが無事に下山することができました。
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ちなみにこれが今回の豪雨の槍沢上流部の姿です。
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ほいで、これが普段の槍沢上部です。
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もう一度、今回の槍沢です。
水、増えすぎ(;´д`)
下山後、僕の登山復帰を祝おうと彼女が徳沢ロッジで食事をすることを提案してくれました。
彼女の優しさに触れ思わず嬉し涙が出そうになりました。
ただ、僕の登山復帰のお祝いなのに、食事代を出したのが僕だというのが、僕ら二人の上下関係を物語っているようでアレです(;´д`)
おしまい
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