夏が終わる。
今年の夏、僕は「信じる心」を失った。
もう山なんてどうでもよかった。
なにもかもを壊し、なにもかもを殺したかった。
夏の目標はあった。
人が攀じらないルートから綺麗に山頂へ抜けるラインを2本考えていた。
しかし、僕は下界での許せない裏切りで山への情熱を失った。
自分がどこへ行きたいのかも分からなかった。
とにかく、ここではないどこかへ行こうと思った。
歩き続けなければ僕の魂は死ぬと思った。
原点へ帰ろうと思った。
僕は6年前に山に復帰した時に登った山へその時と同じルートで登った。
あの時の気持ちに帰れば何かが見つかるような気がした。
見つかるわけなどないのに何かにしがみつきたかった。
僕はまだ闇の中にいる。
朝の来ない闇はないと知っていても、この闇がいつ明けるのか僕には分からない。
今は手探りで暗闇を進むしかない。
怯えて立ち止まればすべてが壊れてしまうことを知っているから。
この夏の終わりに僕はどこへ向かい、どこへ辿り着くのだろうか。
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